サラリーマンの生涯収支と老後資金についての考察【その2】

第2回:退職金はどのくらいもらえるのか?

前回の記事では、サラリーマンの生涯収入について解説しました。今回は、退職時に支給される退職金について詳しく見ていきます。企業規模や学歴によって異なる退職金の平均額、近年の傾向、税制優遇についても解説します。


1. 退職金とは?

退職金とは、会社を退職する際に受け取る一時金のことで、労働者の長年の勤続に対する報酬として支給されます。多くの企業では以下の2種類の退職金制度があります。

  • 退職一時金:退職時に一括で支給されるもの

  • 企業年金(退職年金):年金形式で一定期間支給されるもの

これらは企業ごとに制度が異なり、退職金制度がない企業も増えてきています。

2. 退職金の平均額

退職金の額は、学歴や企業規模、勤続年数によって大きく異なります。以下は、2023年時点の厚生労働省の調査による平均退職金額です。

【学歴別・企業規模別の退職金額(定年退職の場合)】

学歴 大企業(1,000人以上) 中小企業(100〜999人)
高校卒 約1,680万円 約1,030万円
短大卒 約1,910万円 約1,150万円
大学卒 約2,230万円 約1,220万円

※ 出典:厚生労働省「退職給付に関する実態調査」2023年

大企業に勤めるほど退職金が多くなる傾向があり、特に大学卒の大企業勤務者は2,000万円以上の退職金を受け取るケースが一般的です。一方、中小企業では退職金の水準が低く、1,000万円前後にとどまることが多いです。

3. 退職金の減少傾向

近年、退職金の支給額は減少傾向にあります。その主な理由は以下の通りです。

  • 企業の業績悪化:終身雇用の崩壊に伴い、退職金制度を廃止・縮小する企業が増加

  • 確定拠出年金(DC)の導入:従来の「確定給付型」から「確定拠出型」へ移行し、個人の資産運用に委ねる企業が増加

  • 労働環境の変化:転職が一般化し、長期勤続者への退職金優遇が縮小

実際、厚生労働省のデータでは、この20年間で退職金の平均額は約20%減少していることが報告されています。

4. 退職金の税制優遇

退職金には税制優遇措置があり、「退職所得控除」が適用されます。控除額は勤続年数によって異なり、以下の計算式で求められます。

  • 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数

  • 勤続20年超:800万円+(70万円 ×(勤続年数−20))

例:40年間勤務し、2,000万円の退職金を受け取る場合

  • 退職所得控除:800万円+(70万円 × 20)=2,200万円

  • 課税対象額:2,000万円 − 2,200万円 = 0円(非課税)

つまり、40年間勤めた場合、退職金2,200万円までは非課税となります。これにより、多くの人が退職金に税金をほとんど支払わずに済む仕組みになっています。

5. 退職金の活用方法

退職金を受け取った後、賢く活用することが重要です。

  1. 生活資金として確保:老後の生活費に備え、無駄な支出を抑える

  2. 投資に回す:長期的な資産運用を考え、NISAやiDeCoを活用

  3. 住宅ローンの返済:残債がある場合は一部繰上げ返済を検討

  4. 医療・介護費の準備:将来の医療費・介護費用に備える

特に、年金収入だけでは不足する場合もあるため、計画的に退職金を活用することが求められます。

6. まとめ

退職金は企業規模・学歴によって大きく異なる。大学卒の大企業勤務者は約2,230万円。
近年、退職金は減少傾向にあり、特に中小企業では1,000万円前後が一般的。
退職所得控除を活用すれば、長期勤続者は退職金に税金がかからないことが多い。
退職金の使い方を計画的に考え、老後資金や資産運用に充てることが重要。

次回は、**「定年年齢は何歳? 退職後の人生をどう考えるか?」**について詳しく解説します!


次回:「定年年齢は何歳? 退職後の人生をどう考えるか?」へ続く